竹内大使からの離任挨拶

令和6年11月28日
約3年の任期を終えて、令和6年12月18日に帰国します。後任には、石神留美子大使が着任する予定です。
 
最も印象深かったのは、モルディブと日本の絆を深めた沢山の方々の貢献を知り、知らせることができたことです。サトウラハ(北緯1度18分、東経73度18分に所在する海底山で好漁場として今も知られる)、サトウブリ(鰹一本釣りの擬似餌)に名を残し、1960年代に当地で漁業指導をされた佐藤武久(さとう たけひさ)さん。日本人最初のボランティアとして水泳や柔道の指導をされ、ヴァドウー・リゾートの支配人として観光客を受け入れ、カメの生態を調査して自然保護にも尽くされた阪本時彦(さかもと ときひこ)さん。唯一スルタンの命令でアラビア語編纂された歴史書『モルディブの年代記』の写本を見つけて、正しいアラビア語表記とおおよその英語訳を出版した家島彦一(やじま ひこいち)東京外国語大学名誉教授。日本語を学び駐日大使として7年、そしてその後も職業外交官として最後は外務国務大臣を務めて退官されたアハメド・カリールさん。素晴らしい功績を多くの人たちに知って欲しいと願います。そして、その他にも様々な分野で様々な人と人との交流があり、今の両国の友好関係があることに胸が熱くなります。
 
ヤンマーのエンジンがモルディブの伝統的な船、ドーニーに取り付けられて今年50周年を迎えます。モルディブの漁業を変えたと言われる大きな転換点でした。エンジンの維持管理や修理の技術も伝わりました。また、70年代から日本は地方島に学校建設を支援しました。津波からマレ島を守った護岸壁、30年以上経っても各種行事に使われるソーシャルセンター、4つの近代的なマレ市内の学校は、日本を象徴する援助案件です。
 
現代を生きる我々も、先達を見習ってモルディブの発展のための案件の形成と実施に務めてきました。気候変動に強靭な島づくり、地上デジタル放送、漁業支援、年間約30件のJICA研修、5年目を迎えた毎年6人の政府職員が日本で修士号を所得する奨学金プログラムJDSはその例です。日本が寄贈した救急車、消防車及びゴミ収集トラック等がモルディブの人達の直面する諸問題の解決に役立っていることを嬉しく思います。
 
モルディブは日本にとって、自由で開かれたインド太平洋の重要なパートナーです。国際場裏での堅固な協力関係もあります。当地で関係構築の最前線を務める機会を得た幸運をかみしめながら、過去も現在もこれからも、両国関係が発展することを祈ってやみません。
 
在モルディブ大使 竹内みどり